レビュー②『第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと』

2021/10/03

レビュー(本) 英語教育 英語教師 言語一般 授業術 日本語教育 日本語教師

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1. はじめ

本記事は前の記事の第二弾です。


今回紹介する本はこちらです💁‍♂️


今回の記事でも本の内容を参考にしながら復習します!今日はp.10〜あたりについてです。

2. 言語処理は宣言的知識?それとも手続き的知識?

前の記事で「ネイティブ話者は、この一連のプロセス(言語処理)が自動化しているため、スラスラ話せます。」と書きました。つまり言語処理のプロセスは、宣言的知識か手続き的知識のどちらかと言われれば、後者となります。

一般の日本語母語話者や英語話者が自分たちの母語を文法的に説明しきれなかったりするのは、これが理由です。

本著のp.10冒頭でも、
(前略)言語処理のシステムが手続き的知識というスキル的な知識に支えられて動いていると述べました。言語習得も、そのようなスキル的な知識の習得としてとらえられます。

と書かれています。

3.言語習得(手続き的知識)を促すためには?

そして、そのような知識の習得を促進するには、暗示的な学習メカニズムが働く必要があると考えられています。暗示的というのは、とにかくやってみて体得していくような体験学習的なメカニズムです。(p.10 4行目〜6行目)

手続き的知識を言語以外の文脈で例えると以下のようなものです。

  • 自転車の乗り方
  • バットの振り方
  • 泳ぎ方 等

つまり言語化されず無意識にやっていることです(=やり方)。もちろん、分析すれば言語化できないこともないですが、わざわざ言語化しなくてもできることです。

読者の99%は自転車に乗れると思うので、ここで更に例出しますが、右足をどう動かして、左足をどう動かしてと説明せずに乗れますよね。そして乗り方を説明してと言われても難しいですよね。でも乗れますよね。そのスキルが手続き的知識です。

言語の文脈に戻すと「たら」「れ」「ば」のそれぞれの違いってなんですか?と一般の日本語母語話者に聞いてもほとんどの人が答えられないでしょう。しかし彼らは間違えること無く正しくそれぞれを使うことができます。

これが本来の言語処理のプロセスであり、言語習得はこのような知識(手続き的知識)の習得として考えられています。そしてその手続き的知識の習得を促してくれるのが、暗示的なメカニズムでの学習だそうです。

4.まとめ(+実例、経験)

別に勉強したことないけど、その国に行ったら現地の言葉が話せるようになってた人ってたくさんいますよね。僕の母親(フィリピン人)もその1人です。日本語学校なんて行ったことないし、教科書で勉強もしたことないし、JLPTのJの文字すら知りません。しかし日本で生活していく上で必要十分な日本語レベルを習得していますし、きっと今後フィリピンで生活したとしても日本語を忘れることはないでしょう。

僕は仕事(接待や上司との付き合い)で日本人のお客さんをターゲットにした外国人キャバクラ(いわゆるKTVとかJTVっていうやつです)へ何度も行ったことありますが、日本語が堪能なキャストがたくさんいます。それは暗示的なメカニズムに基づいた学習(彼女らはそのつもりないでしょうが(笑))が働いている結果でもあると言えます。

従来の明示的なメカニズムで一生懸命勉強しているのになかなか伸び悩む学習者と比較すると、なんか複雑な気持ちになったりしますが(笑)、やっぱりこういったSLA(Second Language Acquisition=第二言語習得) の知識を教師自身がしっかり持って、正しい方向へ努力させることってとても大事なことだと思います。それは学習者のためでもあり、教師のためでもあります。

僕は明示的な学習を無駄というつもりはないですが、「習得」という点においては、暗示的な学習の方が大切だと考えています。それはSLAが証明してくれてるし、僕自身の語学学習経験もそうだし、周りの人が証明しています。もちろん言語習得に絶対はないので、例外もあるでしょう。

”私の教えてた学習者は明示的な学習だけやっていて習得できてるよ!”って思ってる人もいるかもしれませんが、その人が学習言語を使用(話したり、聞いたり、書いたり、読んだり)する環境って、本当にその明示的な学習をやっている時だけでしょうか?授業時間外に日本語のアニメを見たり、バイト先で日本語で仕事したりする時間も彼らにとっては日本語を使用している時間であり、暗示的な学習をしている時間です。

同じN4合格者なのに、元技能実習生と現地の教室でしか勉強したことない人の間に日本語力に差(特に話す聞く)があったりするのはどうしてでしょうか。留学から帰ってきた友達が英語力が格段に伸びたりしてるのってなんででしょうか?日本の大学でもフル英語の授業を取ってるのにも関わらず。

もう一度言いますが、僕は明示的な学習が無意味で無駄だと言うつもりはないです。僕も一言語学習者として明示的に学習したい時もあります。ただそれは知識を整理するためであって、習得を目指しているからではないですし、あの時に知識が整理されたからペラペラ話せるようになったという記憶もないです。整理された後に体験的に学習した結果、話せるようになってます。

目的に応じて、明示的、暗示的を使い分けることが大事で、SLA理論が証明している通り「習得」に働くのは暗示的知識、すなわち手続き的知識であることは明らかでしょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます🙇‍♂️

自己紹介

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フィリピン🇵🇭の語学学校で日本語・英語教師をしています。 日本語教育、言語教育、教育一般を中心に記事を書いています📝 I am Japanese/English teacher in the Philippines🇵🇭 I am writing my blogs from the point of view of a teacher📝 Theme I write is about "Language Education", "General Education" but sometimes other things✌️

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